設立趣旨(会長挨拶)

日本地方公会計学会の射程
宮城大学 内田直仁

これまで、地方公会計を専門とする学会の存在は確認できなかったが、会計学や財政学等の学会や研究組織で秀逸な研究成果が見られていた。東日本大震災の復興過程においては、同時期に広範囲に渡って甚大な被害が起きたため、各地の情報共有・活動が必ずしも効率的ではなかった。私も被災地で行政支援を行っていた一人であったが、この経験から有事に効率の良い情報共有・活動の難しさともどかしさを実感し、平時からそれらを想定し研究・整理・準備する必要があるという思いを抱いた。これは、当時の救済・復興活動に従事した多くの者が共有していた思いでもある。日本全国が被災地と評されるような度重なる甚大な災害、その度に地方の財政基盤の脆弱さを目の当たりにするが、これはなにも被災が影響しなくとも、慢性的に厳しい状況であることは周知の通りである。その限られた地方財政の中、効率かつ地域の総論賛成・各論反対を軽減できる政策は、有事でも平時でも重要である。これらの問題に対して、各地域の細かい取り組みを会計的に集約する重要性が語り継がれ、コロナ禍を受けこれが加速し本会の結成となった。
本会の射程として、事業単位の取り組みを会計的に評価し事業改善に資することあげられる。その点では、地方公管理会計と位置付けられることも想定される。そして、これらの事例の蓄積は地方公会計制度に繋げなければならない。これは当然に、日本の企業会計原則が帰納的発展の歴史を意識するものである。特に地域性・伝統性を重視する事業単位では、これを重視すべきと考えられるため、これらを効率良く集約することは、本会の大きな存在意義・社会使命になると考えている。当然、地方にも国際化・情報化の波は押し寄せており、これらのバランスを考えることも重要課題である。よって、萌芽的で演繹的な考え方も必要である。このため、事例や理論を幅広く集約できる、開放的な学会運営を大切にしたい。
学域としてはピンポイントでありながらも、広域・広範に渡り奥深い地方公会計の問題に対し、それに携わるあらゆる知識・技能・情報を持つ人材の結集をはかりたい。そのため、産学官の研究者だけでなく、実務に従事する行政担当者や公認会計士・税理士・行政書士・コンサルタント等の実務専門家、政治家・企業家・非営利組織等として、地域のまとめ役として多くの生の声を聞いている方々の参加をお願いしたい。当然、これからの未来を担う学生をはじめとした若者や国際感覚も重要であるため、留学生をはじめとした日本に居住する外国籍の方や海外の研究者の参加も期待している。このため本会は、形式的な学術の作法より、本質的な情報の共有を重視したいと考えている。しかし、学術団体であるため、一定の水準を保つため、報告者へのフォロー体制を充実させ、参加しやすい運営を心掛ける所存である。
地方公会計の英知結集のため、是非力添えをお願いしたく、本会の入会をお待ち申し上げます。

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